Kurashi Manabi Naoshi

 このブログは、これまで仕事ファーストで置き去りになっていた、日々の暮らしを立て直すために作成しました。子どもが独り立ちして一人暮らしとなったいま、部屋や身なりを整えたり、旅や読書で心を養ったりしながら、心身ともにすこやかに生きていくために、もう一度「暮らし」を学びなおします。 

『海月姫』最終17巻読了~ジジ様への愛をこめて

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海月姫』17巻読了。今まで散々笑わせてくれたマンガですが、最終巻を読んでいたら、涙があふれてしまいました。強くて美しい蔵之介が小さな子どものように弱くなってしまい、それを月海&尼~ずが助ける場面があったり、家族や結婚の意味を問い直すシーンがあったり、ついに目白先生が姿を見せ、いままで正体を隠していた理由が明らかになったり。とにかくてんこ盛りの内容でしたが、ここでは私が大好きなジジ様について語ります。※以下、ネタバレあります!

夢を追うために必要なスキルを提供する存在

 主人公の月海と、もうひとりの主人公である蔵之介には、彼らの才能と情熱を陰から支える役目の人たちがいます。そのひとりが、尼~ずのひとりであるジジ様です。

ジジ様は、『相棒』の水谷豊や『ちい散歩』の地井武男のようなシニア男性にばかりときめく「枯れ専」と呼ばれる女子。個性豊かなオタク女子集団「尼~ず」のメンバーの中では影の薄い存在です。しかし、好きなものばかりを地味に追いかけている尼~ずたちが、派手で実行力のある蔵之介に振り回され現実に直面したとき、いつも面倒な役目を引き受ける決断をして、確実に業務をこなします。

たとえば、月海デザインのファッションブランドのブログをあっという間に開設したり、面倒な割に報われないイメージの生産管理を引き受けたり、最終巻で蔵之介が弱った時、人前に出るのが苦手にもかかわらず、真っ先にピンチヒッターを引き受けたり。地味だけど頼りになるそのキャラは、『総務部総務課 山口六平太』を思い起こさせます。

才能を事業化するためには、誰かが大人の役割を果たさなければならない

もしかしてジジ様は、大好きな枯れオヤジで政治家の鯉淵慶一郎の息子だから、蔵之介に肩入れしている面もあるかもしれません。しかしそれより何より、蔵之介の勇気や行動力に、表情には出さないけれど、静かに感動していたのだと思います。

クリエイティブな人は、そのキャラクターや才能に惚れた現実主義者が事業のパートナーになってくれると、安心して力を発揮することができます。本田宗一郎にも松下幸之助にも、そのような番頭とか参謀にあたる存在がいました。

月海も蔵之介も、誰にもマネできないアイデアを出すことはできても、それを現実に落とし込む際にまつわる煩雑な業務にまでは、目が行き届きません。クリエイティブな発想と子どものような感性は切っても切れないため、事業化するためには組織の誰かが大人の役目を果たさなくてはいけない。ジジ様だって、ずっとひそかに枯れオヤジを愛でていたいはずなのに、それでも尼~ずと、彼女らの拠点である天水館を守るため、できることをしようと決心したのです。

才能とビジネスの橋渡し役は貴重

蔵之介の異母兄である鯉淵修も、ブランド立ち上げの資金をポンと提供してくれたり、尼~ずがデモを行う際、許可をとってくれたりと、大事な局面で現実をサポートしています。わかりやすいヒーローではないけれど、確実に、その人にしかできないことを、必要な場面でしてくれる存在です。

主人公の月海は才能を持ちながらもあまりにもピュアなため、周りの人に憎まれたり疎まれることがあります。生きるために、気持ちを押し殺したり捻じ曲げたりしている人は、「なんであんただけが素のままでいられるの?」と、被害者意識を持ってしまいがちです。しかしジジ様は、そんなそぶりを見せませんし、そう思ったとしても、自分にできること、素晴らしい才能に貢献できることを見つけて、決断して、実行できる人なんです。

才能やアイデアはビジネスとして成立しないと食べていけない。だけど魂をビジネスに捻じ曲げられる人生は嫌だ。その現実と気持ちの間をつなぐことができる人は本当に貴重だし、ジジ様はそれができる人なんです。

 

【今日の暮らし学び直し】

長く続いたマンガの最後を見届けると、最後まで読み切った達成感と、終わってしまった寂しさの両方があります。この気持ちは、子育てと似ているような気がする。